恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜
松尾(まつお)さん、こんにちは〜」
「胡桃ちゃん、この前ショッピングモールのそばでたい焼き食べながら歩いてるところ見たわよ」
「え……」

「声をかけようかと思ったんだけど、おいしそうに二個目に突入したからやめといた」
「えー! 声かけてくださいよ。スルーされたらかえって恥ずかしいです」
「プッ」と壱世が吹き出すのが聞こえた。
「ちょっとリス君!」

次は喫茶店兼コーヒー豆の専門店を訪ねた。

仄暗くてさほど広くない店内には、革張りのソファ席を中心にテーブル席とカウンターがある。
カウンターの後ろには、世界各国の名前が書かれたコーヒー豆が展示されるように売られている。

「へえ、こんな店があったんだ」
「リス君、コーヒー好きですもんね。豆だけ買うこともできますよ。マスターが豆を詳しく説明してくれます」
「その名前はやめてくれ」
壱世が不機嫌そうな声で抗議する。

「お、胡桃ちゃん。取材?」
店主の細身の中年男性に声をかけられる。

「取材のネタ探しです。あ、瓜生(うりゅう)さん、駅前に新しくカフェができましたね。行きました?」
「ああ、行った行った。なかなかおいしくて嫌になったよ」
「瓜生さんがおいしいって言うなら本物ですね。早く行ってみなくちゃ」
「あ、裏切り者」
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