両手から溢れる愛を

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初めて相合傘をした日。

あの日も、雨が降っていた。


「うわっ雨じゃん」
「ほんとだ」


私たち以外、昇降口には誰もいなかった。


「今日降るって言ってたか?」
「絶対言ってない。天気予報見てないけど」
「俺も見てないけど絶対言ってないと思うわ」


くだらない話をしながら雨が止むのを待っていたけれど、一向に弱まる気配さえなかった。


「止まねーな」
「そだね」
「あーなんか腹減ってきた」
「お菓子あげようか?」


そう言って鞄を漁れば、奥底から出てきた折りたたみ傘に思わず大きな声が出る。


「ちょ、ちょっと!」
「どしたー? お菓子なかったとか? 別にないならないで──」


笑う三島の目の前に、バッと水玉模様の折りたたみ傘を取り出す。


「なんか入ってた!」
「まじ? 天才か?」
「天才かもしれない」


側から見れば頭が痛くなるほど馬鹿丸出しの会話をしていたこの時の私は、まだ気づいていなかった。

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