両手から溢れる愛を
「あのねぇ! バカはバカでしょ! 大体昨日だって──」
湿った雨の匂いと、光る空、轟く雷の音。
五感全てで思い出せる昨日のこと。
「……昨日だって?」
黙ってしまった私を変に思ってか、はたまた単に続きを聞きたいだけか、みっちゃんが繰り返した言葉に、はっと意識が教室へと引き戻される。
「……雨降ってたのに、傘、持ってこないし」
さっきまでの勢いはどこへ行ったのか。
急に小さくなった私に、みっちゃんが不思議そうな顔をしている。
「……ま、確かにな」
そう言った三島の顔は見れなかった。
前方の席へと歩いていく後ろ姿。
いつもと変わらないその背中を見て、腹の奥がぐるりと唸った。
昨日、相合傘9回目。
三島と、キスしそうになった。