両手から溢れる愛を

「何してるの?」

いかにもな甘い声に、私にはできないことをやれるその子がすごいなと素直に感心してしまう。


「待ってる」
「何を?」
「雨止むのを」


それに対して淡々と答える三島にも、すごいなと感心する。

普通あれだけあからさまなら、多少は態度を和らげたりもするものだと思うけど。


「ふぅん。あたし、傘持ってるよ」
「へぇ」
「一緒に帰ろうよ」
「いや、いい」
「なんで?」
「どうせそのうち止むだろ」
「今日は午後、ずっと雨だよ」
「ふぅん」
「ね、帰ろ?」


すごい。
怒涛のジャブが打ち込まれているのに、まるで興味なしと全てを躱している。


「いや、傘あるからいいわ」

いつのまに距離を測ったのか、それとも全てを断ち切るためか。途端に繰り出された三島のストレートが恋する乙女を襲った。

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