両手から溢れる愛を
「誰が意気地なしで思わせぶりって?」
「っ……!」
怒涛の雨の中、シャッターを睨んでいた私に声をかけてきたのは。
「っ…み、しま……」
「はは、ひっでぇ」
名前を呼んだ私に、びちょびちょの三島がくしゃりと笑った。
水も滴るなんとやらとはよく言うけど、滴るレベルなんかすでに超えていて、蛇口の壊れた水道ぐらい三島の髪とか服とか至る所からじゃばじゃばと水が流れ落ちている。
「あーやっべ、めっちゃ濡れたわ。氷川速ぇよ」
どさりと鞄を地面に投げ置いて、タオルタオルとつぶやきながらその場に座り込んだ三島。
「げっ、まじか」
スカスカの鞄に気持ち程度に入っていた教科書が濡れてふにゃふにゃになっているのに気づいて、慌ててタオルを押し付けている。
「先に身体拭きなよ」
仕方がないからタオルを貸してあげた。
「お、さんきゅ」
「てか、傘は?」
忘れてきたならいざ知らず、あのときしっかりと傘を持っていたはずなのに、何でこんな土砂降りの中手ぶらで。