両手から溢れる愛を
「貸した」
「……貸した?」
「おう」
そう言った後、何事もなかったかのように髪を拭き始めた三島。
「え、誰に?」
「傘忘れたってやつ」
さっきの子だ。
「だから、貸したの?」
「なくて困ってたからな。これ使えばって言ったら喜んでたよ」
絶対嘘。
あの子、絶対傘持ってたのに。
三島もきっとわかってたはずなのに。
三島と一緒に帰りたいと、そう思って嘘をついていたことに。
「はは、ひど」
知らなかった。
意外と三島がそんな人だということを。
そのことがどうしようもなく嬉しくて、心の奥底から仄暗い歓喜が湧き出てくるような、自分がそんな人間だったことを。
「思わせぶりなことしたら、怒られるからな」
ある程度拭き終わったのか、私のタオルを首にかけながらそう言った三島。
使い終わったなら返してよと、そう言おうとした頭が、瞬時に別の思考に塗り替えられた。
「え」
「ん?」
まって、まってまって。
「え、まさか。聞いてたの!?」
あの日のみっちゃんとの会話。
思わせぶりなことをしたツバサにいたく憤慨していたあの日のこと。
「……おう」
どこか気まずそうに逸らした視線と、まごうことなき肯定の言葉が、その答えだった。