両手から溢れる愛を

「は、はぁ!? バカってとこからしか聞いてないって言ってたじゃん!」
「そりゃあんなの盗み聞きしてましたとか言えねぇだろ!」


あんなの!?
あんなのって……どんなのだったっけ!?


思い出す。いや、思い出さなくても覚えてる。


だって、あのとき言ったのは。


「……もしかして、あれも」
「え?」
「あれも、聞いてたの!?」
「あれ?」


言うのが恥ずかしくて遠回しに聞いてるのに、こんな時だけ察しが悪いのは何なの!


「だから! その、回数、数えてる……こと、とか」


相合傘の、とまでは言えなかった。


萎んだ声を雨音が上書きする。

聞こえたのか心配で、てかむしろ聞こえてなければ良いと、知りたい気持ちとは矛盾した気持ちが湧き上がる。


「……おぉ」

でもそれは顔を赤くしながら呟いた三島によって、見事にぶち壊された。


「さ、さいってぇーー!!!」

ありえないありえない!
あんなのが聞かれてたなんて恥ずかしくてどうにかなる!


「だから聞かなかったふりしたんだろ!」
「だったら最後まで貫き通してよ!」
「それはごめん!!」

はぁはぁとお互いに声を荒げて、それに負けじと軒を打つ雨の音が強くなった気がした。

< 29 / 34 >

この作品をシェア

pagetop