両手から溢れる愛を
「……で?」
「え?」
もう知らん。
こうなったら、とことん開き直ってやる。
「で、どう思ったの?」
「どう、とは」
「それを聞いて、どう思ったのかって聞いてんの!」
今の私はそんなに気が長くない。そんな余裕なんてないんだもん。
むすっとしながら腕を組んだ私と、あのーそのーと言ってどこかはっきりしない三島。
「あー……っと、その。あれ、10回目だと思ってたけど、違ったんだなって」
そう、思いました。
最後の方はほとんど聞き取れないくらい小さな声だった。
「え?」
10回目?
それは意地悪な天気のせいで、まだ訪れていないと思っていたのに。
「まぁ覚えてないよな」
「え、ほんとに10回目?」
「うん。氷川にとってはそんな気じゃなかったのはわかってるけど。その、雨の日とかじゃなくて、去年の夏に」
去年の夏?
「あっ」
「思い出した?」
思い出した。
そうだ、去年の夏。
日差しが眩しくて、むせかえるような暑さがどこまでも続くような気がしていた、あの日。
もう無理、暑い、耐えられないと言っていた三島に、日傘を差してあげたのだ。
そんなの言ってる方が暑くなるでしょと、だからこれで静かになるようにと。
半分ふざけて、半分の下心を持って。
でもあんな一瞬のこと。
なんだか恥ずかしくなってすぐに辞めたのに。