一途な副社長は寵愛する彼女に愛を注ぐ
そんな会話を秘書の冨樫さんと交わしている間も、副社長の神楽さんは、俺の何を探ろうとしているのか、表情ひとつ変えず、じっと見ていた。

しかも、おめでたのくだりでは、地に這うような低い声で遮った。


けして、態度が悪いとかそういう印象ではなかったが、何か引っ掛かるな。

やっぱり、麗に妻のフリをさせてたのに気付いていたのか?


わからない。



だが、今日は特に凄かったな。
麗も、結にオーダードレスを作ってもらってご機嫌だったし、いつもに増して妹ながら綺麗だった。

そのせいで、いろんな会社の奴らが、麗をいやらしい目で見ていた。
麗は、相変わらず気付いていない。

そして、俺も然り。
麗が隣にいてくれたおかげで、何人もの奴らから自分の娘を嫁にと、紹介しようと連れてきてはみたものの、麗を目の前にして、敵わないと思ったのか、誰も余計な紹介をしてくる猛者はいなかった。


まぁ、今日のパーティーを乗り切ればしばらく大丈夫だろう。

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