冷たい夜に、愛が降る

なんとか、誰にもバレずに学校に着いて、無事に授業を受けられているのはいいけれど。


チラッと視線を隣に向ければ、ノートを取っている御田くんの綺麗な横顔。


うちのクラスは、基本的に教室の席は自由。


でも、今まで、御田くんは毎回、教室の一番後ろの窓側の席に座っていた。


彼が休みの日でも、そこはもう彼の専用の特等席と言わんばかりに、誰かがその席に座ることなんてなかった。


そんな彼が今、教室の真ん中、しかも、女子のすぐ隣に座っているもんだから、先生でさえ、教室に入ってきた瞬間に目を見開いていたぐらい。


私が、あんな風に盗撮を注意したの、そんなに珍しいことだったのかな。


まさか、こんなに彼がそばから離れないとは思わなかった。


嫌な気持ちはしないけど、できるだけ目立ちたくないっていうのが本心だ。


授業終了のチャイムがなり、次は体育授業。


みんながぞろぞろと席を立って教室を出ていく。


「香山さん、次って卓球だよね?」


「うん」


隣同士で座っていた私たちは、教室を出るタイミングも、同じ。


御田くんに話しかけられることに少しずつ慣れてきている自分が少し怖い。


「卓球、一緒にやらない?男女合同だよね」


「えっ……あ、うん」


なんてとっさに返事をしたけれど。


あの国民的人気俳優と卓球なんて……私みたいなのが、やっていいのかな?


というか……御田くんはどうしてそんないきなり……。


私たち一般人とは、かけ離れたような世界にいる人間だから、こんなところで馴れ合うのは嫌なタイプなんじゃと思っていたのに……。
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