冷たい夜に、愛が降る
「あの、御田くん」
体育館に向かいながら1日中疑問に思っていたことを聞こうと、彼に話しかけると、すぐにこっちを見て「ん?」と耳を傾けてくれた。
画面越しで見ていた彼は、もっと、何に対しても無反応で、人に興味がなさそう、と思っていたから、そういう何気ない仕草一つ一つが意外。
良くも悪くも、私たち一般人は、表舞台に立つ人たちのほんの一部しか知らないんだと実感する。
「あの、なんで、私と一緒にいてくれるのかな?って思って。1年の頃から、御田くん、単独行動多かったから……」
そう言えば、彼は少し考えるように視線を上に向けて、口を開いた。
「そもそも、ひとりが得意ってわけじゃないから。俺」
「えっ……そうなの?」
これまた意外だ。
今日は本当に、御田菫の新たな一面が次々と見つかるなあ……。
「うん。出来れば、ここでも友達が出来ればいいなって思ってる。でも、俺の仕事上、話しかけても逆に気を遣わせてしまうかなって思って」
「そうだったんだ……」
御田くんなりに、色々考えた上での行動だったんだな……。