冷たい夜に、愛が降る




「えっ……香山さん、もしかして弁当手作り?」


「うん。でも、ほんと、テキトーに作って詰めただけだから、あんまり、みないでもらえると」


と、私の弁当を御田くんが覗き込もうとするので、手で弁当を隠す。


あれから、私と御田くんは体育の授業に本当にペアで卓球をすることになり、今日の学校の日程は、残り1つの授業だけとなった。


その前に、みんなが待ちに待ったお昼ご飯の時間。


もちろん、ここでも、私と御田くんは一緒。


校内の一階。
ロビーの端にあるテーブル椅子があるスペースで、ふたりでお昼をいただく。


「え、すごいじゃん。卵焼きもある」


そう言った御田くんが、こちらをじっと見る。


うぅ……。


授業の間、御田くんは一度もマスクを外さなかったから、まだなんとかまともに話せていたけれど。


ご飯のため、マスクを外した彼と向かい合って食事をするのは、少々難易度が高い。


日本人離れした綺麗すぎる顔。


ファンではないけど、流石に、生身の御田くんの顔にはドキッとさせられてしまう。


それなのに……卵焼きと私の顔を交互に見る御田くん。


クールで愛想を振りまかない、のが、テレビの中の御田菫なはずなのに。


「……一口、食べます?お口に合わなくても知らな──」


「いただきます」


「あっ、ちょっ」


私が話し終える前に、御田くんは、私の弁当の中の卵焼きをつまんで口に入れた。


はぁ……相手は芸能人。
さぞかし、美味しい美味しい良いご飯を食べてきているだろうに。


そんな舌の肥えているであろう方の口に、特売で買った卵で作っただし巻き卵が入っていく。


大丈夫だろうか……。

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