冷たい夜に、愛が降る
「うま。やばいね、香山さん」
「ほ、本当ですか?……よ、良かった……」
御田くんの表情を見ると、さっきよりも目が輝いて見えて、きっと本心で言ってくれているんだとわかるから、嬉しくなる。
「いつも自分で作ってるの?」
「はい。できるだけ節約したいですし、早く自立するためにも、料理は大事なので」
「節約って……今更だけど、同い年だよね?」
「一応、17です。御田くんこそ、いつもご飯はそんな感じですか?」
と、彼の手元にあるメロンパンに視線を向ける。
「まぁ……」
「まぁって……御田くん、普通の高校生と違って異常なハードスケジュールだと思うし、できるだけバランスの良い食事した方がいいと思います。絶対体調崩すかと……」
「じゃあ、香山さんが俺のご飯作りに来てよ。金なら出すし」
「……な、何言ってるんですか」
御田くんが、あんまりにも顔の表情を崩さずにいうので、言葉が出てこなくて、慌てて食事を再開する。
ご飯に集中しよう。
冗談だと、わかっているつもりでも、ドキッとしてしまうのは、この、整った顔のせいだ。
「金とっていいレベルだって思ったのは本当」
なんて、あまりにもまっすぐな瞳で言うから、そのまま吸い込まれてしまいそう。
「……っ、そんな大げさなっ」
「そこは、素直に受け取ってよ」
「……っ、あ、ありがとう、ございますっ」
どうしよう。
今まで、褒められたことと言えば、バイトでの業務に関してのことくらい。
自分が日常生活でしていることをちゃんと褒められたことなんてなくて、どんな顔をしていいのかわからない。
顔が……熱い。