冷たい夜に、愛が降る
「てか、香山さん、なんでずっと敬語?俺ら同い年だよね」
頬杖をついた御田くんが、こちらを見つめながら言う。
な、なんでって……。
御田菫を目の前に、一般人がタメ口で話す方が難しいと思うんだけど……。
「香山さん、俺の友達になってくれるって言ったよね?」
「……っ」
『俺の友達』
その響きに、食べているミートボールが喉に詰まりそうになった。
改めて聞くと、あまり心臓に良くない。
「こういうのは、時間が経つにつれてお互いを知っていって、徐々になくなっていくものといいますか……」
「なるほど」
そういうものか、と呟きながら一口メロンパンをかじる御田くん。
「じゃあ、お互いのことを知ろう。香山さんは、なんでこの学校を選んだの?」
えっ、面接?
「えっと……」
自分の話をするのは怖い。
でも、あの御田菫が、私のことを知ろうとしてくれているんだ。
何も話さないのはなんか違う気がして、当たり障りなく、答えることに決めた。
できるだけ、“普通” に見えるように。
「早くお金を貯めて家を出たくて。通信制の方が日中、自由に使えて働けるから……今まで両親にはたくさんお世話になったし、あんまり負担かけさせたくなくて」
と答えて、御田くんの表情をうかがう。
……大丈夫かな。
嘘はついていない。
優子さんたちに、負担をかけさせたくないのは本当だ。