冷たい夜に、愛が降る

「香山さんと、同じかな」


「えっ」


まさか、こんなところで自分の名前が出てくるとは思わず、びっくりする。


私と一緒って、どういうことだろうか。


「俺んち、母子家庭でさ、兄弟、4人いんの」


「え!?そうなの!?」


御田くんの家族構成。
初めて聞くけど、これ、公には出ていない情報なんじゃ。


「一人っ子に見えるってよく言われる」


と御田くんが笑う。


「で、まぁ、父親が多額の借金作ったまま家族置いてってさ……あるあるなんだけど」


なんて笑って話す御田くんだけど、衝撃で言葉が出てこない。


御田くんに、私の今の気持ちなんてわかんないって思っていたけど、御田くんも御田くんなりに、大きなものを抱えていたんだ。


「借金はまあなんとか、返せそうなんだけど、下の兄弟のことか、母さんのこれからのこと考えたら、もう少し安心して欲しくてさ。だから、俺の仕事が今なくなったら困るんだよね」


今これだけ人気の御田くんの仕事がなくなるなんてこと、ないと思うけど。


それでも、そんなに色々抱えている立場だと、不安もつきものなのかもしれない。


テレビに映る御田くんからは、そんなことを抱えているなんて全然感じられなかったのに。


「なんか、香山さん相手だとすごいベラベラ話しちゃうわ。ごめんね」


と御田くんに謝られて、ブンブンと首を横に振る。


「話してくれて、ありがとう!私も、もっと頑張ろうって励まされた……!」


「うん。俺も、同世代で同じように頑張っている人がいると思うとモチベ上がる。お互いに、頑張ろうね、家族のために」


御田くんは優しく微笑んでそういうと「ところで、卵焼きもう一個もらってもいい?」なんて無邪気に聞いてきた。
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