冷たい夜に、愛が降る
*
「名前、なんていうの?」
大通りに出て、車が行き交うそばの歩道を歩きながら、男たちと話す。
「……恋白」
「恋白ちゃんかー、高校生?」
「……はい」
「やっぱりな~。ダメだよ~あんなところ、女の子ひとりで歩いてたら。悪い大人に連れていかれるんだからね~」
そう言って、私の髪に触れる。
もうひとりが「お前が言う?」とケテケテ笑う。
あぁこれ、想像以上に気持ちが悪いかもしれない。
無心でいれば、なんとか過ぎ去ってくれるんじゃと思っていたけれど。
それでも、彼らの癇に障ることを言えば、何をされるかわからないから、大人しくすることしか出来ない。
「ちょ、先輩に連絡するわ」
片方がそう言ってズボンのポケットからおもむろにスマホを取り出して“先輩”という人に電話をかけ出した。
だんだんと、これから起こることが少しずつ現実になってきて、心臓がどくどくと音を鳴らす。
どうにでもなれって……そんな気持ちだったはずなのに。
今更、怖い、なんて、それこそバカすぎるよ。
「はい、めっちゃいいっすよ。え?……あ、はい。ね、恋白ちゃんって、彼氏いるの?てか、いたことある?」
先輩と話していたその人が、突然そう聞いてきたので、とっさに「いないですし、いたこともないです」と答えると、電話越しにそのことを伝えられる。
隣で、「まじかよ、え、ガチ?」なんて聞いてくる人が、私の下から上をなめまわすように見てくる。
……その質問、これからする“バイト”に関係あることなの?意味がわかんないよ。