冷たい夜に、愛が降る
「うちの先輩も、恋白ちゃんに会うの楽しみにしてるって〜」
電話を切ったひとりがそう言って私の肩に手を回す。
「あれ?なに、もしかしていまさらちょっと怖くなってる?」
なんて、あまりにも至近距離で顔を近づけられて、とっさに顔をそむける。
「アハハハ、だいじょーぶだって。みんな優しくするから」
「先輩は、怒らせるとちょーっと怖いけどねー」
「まぁでも……」
ひとりに肩に手を回されたまま、男の人のもう一つの空いた手がこちらに伸びてきて、私の顎を指でクイッと持ち上げた。
「稼ぎたい恋白ちゃんは、ちゃんと、いい子にするよね?」
「……っ」
嫌だっ、そう思った時だった。
私たちの歩く少し先の路肩に、黒塗りの車が停まって、男2人がその車を少し警戒するように立ち止まる。
そして、後部座席から人が降りた。
「……誰だ」
「いや、知らね」
と私の両脇にいる男たち。
車から出てきたのは、背の高い男性で、目の下は黒マスク。
その風貌にものすごく見覚えがあると思った瞬間。
「あんたら何してんの」
と、目の前の彼が鋭い目つきで男たちを睨みつけた。
なんで……こんなところにいるの。