冷たい夜に、愛が降る
episode1

「恋白ちゃーん」


声をかけられて、ハッと我に返る。


「もう5時すぎてるから、上がって!」


「あ、はいっ」


私は、高校に入学したタイミングで、自宅から徒歩15分ほどのところにあるコーヒーチェーン店で、働いて、1年以上になる。


高校は通信制なので、基本的に、平日の日中はバイト漬け。


……できるだけ、家にいたくないから。


今のうちにたくさん稼いで、すぐにでも今の家を出たい。


幸いにも、バイト先の先輩たちはみんな優しくて、楽しく仕事ができているから、ここに決めて良かったとつくづく思う。


「恋白ちゃんさ」


退勤チェックをしていると、先ほど声をかけてくれた千葉さんがそばにやってきた。


千葉(ちば)柔楽(やわら)先輩。
ふわっとした栗色の髪に、甘いマスク。
私の3つ年上の大学生。


バイト仲間のみんなからは、コミュ力おばけ、なんて言われてるぐらい、誰とでも分け隔てなく話してくれる優しい人だ。


それが行きすぎて、ちょっとチャラいと思うときもあるけれど……。


それでも、私がここに入ったばかりの時から、本当に良くしてくれてお世話になっているので、感謝している。
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