冷たい夜に、愛が降る
「シフト見てみたら、来月のゴールデンウィーク、5連勤だけど、大丈夫なの?俺、どこか代わろうか」
「いえ!大丈夫です。自分から店長にお願いしたので」
「え、まじ?」
千葉さんは、ありえないって反応だ。
きっと、人気者で常に人から誘われるタイプの千葉さんには、わかってもらえないだろう。
「連休は人手不足になりがちだし、お役に立てるのなら。私も、給料増えて嬉しいですし」
「……ほんっと、いい子だね〜恋白ちゃん。うちの妹も少しは見倣って欲しいわ〜」
得意な作り笑いで答えれば、千葉さんがそう言って、「この間もさ〜」と妹さんの話をしだした。
千葉さんには、私と同じ高校生の妹がいるらしくて、良くこうして、妹さんの話をする。
愚痴っぽく話すけれど、人に気軽に話せるってことは、それぐらい仲がいいんだと思う。
この間も、妹さんが、友達と一緒にうちのお店に来てお茶をしていた。
本当に仲が悪かったら、わざわざ兄妹の働いてる場所になんてこないだろうし。
普通の、当たり前の、何気ない家族のやりとり。
そういうことが、私には羨ましくてしょうがない。