冷たい夜に、愛が降る

翌日の日曜。


早朝から、隣町にある学校へ向かうために、電車に乗っている最中。


普段は、学校のWEBから授業動画を見て、課題レポートを提出しているけれど、月に1回はこうしてスクーリングに参加している。


初めは、いろんな年齢の人たちと同じ教室で勉強することに緊張していたけれど、2年になってだいぶ慣れてきた。


みんな、それぞれいろんな事情があるからこそ、変に他人に干渉しないし、それが心地よくて。


通信制にして正解だったって、今では思う。


「……ねぇ、あれって……」


隣から、そんな女の子たちのひそひそとした話し声が聞こえて、彼女たちの視線の先をたどると。


あっ……。


正面の席の一番左端に座る、1人の男性の姿。


黒のキャップに黒マスク、着ている服も黒。
全身黒ってだけで、そりゃ目立つかもしれないけれど……。


それよりも、圧倒的に、彼の全身から滲み出ているオーラが、彼が何者かだ、ということを悟らせる。


深く被ったキャップにマスク。顔なんて一切見えないのに。本物ってやっぱりすごい。


「あんなの、逆に怪しいよね」


「私物でワンチャン特定できるくない?誰なのか特定班に教えてもらおう〜」


え。


耳に入ってくる会話の内容に、まさかと驚いていて横目でチラッと彼女たちを確認すると。


1人が、手に持ったスマホを膝に立てるようにしながら操作しだした。


嘘でしょ。
これって……。
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