繊細な早坂さんは楽しむことを知らない
「秋也くん、半分瓶に入れて……あれっ、お客さんいらしてた?」
女の人は奈江に気づくなり、ハッと口を手で覆う。その拍子に、白い金髪から覗くロングイヤリングが揺れる。
「いや、お客さんじゃないから」
秋也はそう答えると、奈江へと目を向ける。
「美容師の矢崎温美さん。たまにコーヒー豆、差し入れしてくれるんだ」
照明の人だ、と奈江はすぐに思い出す。先日、照明の調子が悪いからと、秋也に仕事を依頼した人の名前が、たしか、温美だった。
「そうそう、コーヒー豆、瓶に入れて冷蔵庫に入れておいたから」
温美は思い出したように言うと、奈江をじろじろと眺めて、意味ありげに口角をあげる。その、意志の強い面立ちによく似合う、真っ赤な口紅に圧倒されていると、彼女は秋也の腕を小突く。
「秋也くんの恋人?」
秋也は様子をうかがうようにこちらを見る。そうして、さらりと答える。
「返事に困る質問は受け付けてない」
「ふーん、意味深。ま、いっか。じゃあ、また来るね」
温美は「失礼しましたー」と、軽やかに店を出ていく。ジーンズの後ろ姿がとても綺麗で、スタイルがいい。ハキハキとしたところも小気味が良くて、奈江とは正反対だ。
どんな関係なんだろう。付き合ってるようには見えなかったけど、別れた恋人だったりはするのだろうか。そうであったとしても違和感がないぐらい、秋也にお似合いに見えた。
奈江がいつまでも彼女が去った扉を眺めていると、秋也が声をかけてくる。
「早坂さん、こっちにおいでよ。コーヒー淹れるから」
「えっ、こっち?」
女の人は奈江に気づくなり、ハッと口を手で覆う。その拍子に、白い金髪から覗くロングイヤリングが揺れる。
「いや、お客さんじゃないから」
秋也はそう答えると、奈江へと目を向ける。
「美容師の矢崎温美さん。たまにコーヒー豆、差し入れしてくれるんだ」
照明の人だ、と奈江はすぐに思い出す。先日、照明の調子が悪いからと、秋也に仕事を依頼した人の名前が、たしか、温美だった。
「そうそう、コーヒー豆、瓶に入れて冷蔵庫に入れておいたから」
温美は思い出したように言うと、奈江をじろじろと眺めて、意味ありげに口角をあげる。その、意志の強い面立ちによく似合う、真っ赤な口紅に圧倒されていると、彼女は秋也の腕を小突く。
「秋也くんの恋人?」
秋也は様子をうかがうようにこちらを見る。そうして、さらりと答える。
「返事に困る質問は受け付けてない」
「ふーん、意味深。ま、いっか。じゃあ、また来るね」
温美は「失礼しましたー」と、軽やかに店を出ていく。ジーンズの後ろ姿がとても綺麗で、スタイルがいい。ハキハキとしたところも小気味が良くて、奈江とは正反対だ。
どんな関係なんだろう。付き合ってるようには見えなかったけど、別れた恋人だったりはするのだろうか。そうであったとしても違和感がないぐらい、秋也にお似合いに見えた。
奈江がいつまでも彼女が去った扉を眺めていると、秋也が声をかけてくる。
「早坂さん、こっちにおいでよ。コーヒー淹れるから」
「えっ、こっち?」