繊細な早坂さんは楽しむことを知らない
「早坂さんと知り合いになるのも、正直、怖かった。俺に関わったせいで、死なせるかも知れない。そんなことも考えた。だから、あの日、具合の悪そうな早坂さんをずっと見てた。線路から落ちそうになる早坂さんを救えてよかったと思う」
「考えすぎです。あれは疲れてただけで、猪川さんとは関係ないです」
知り合う前の話だ。あのとき、線路に落ちていたとしても、秋也のせいじゃない。
「たとえそうだとしても、何かあれば、俺は必ず自分を責める。もうこんな……、過去に縛られた人生からは抜け出したい」
それは、秋也の心の叫びのようだった。
だから、宮原神社の祭りに行きたいと言ったのだろうか。因縁とも言える縁を手放すために。
うつむく秋也の顔を、奈江はのぞき込む。間近で見つめ合う。こんなふうに男の人に接するのは初めてで緊張する。でも、秋也が見せた苦しみに向き合いたい気持ちが奈江の背中を押す。
「今のお話を聞いて思うのは、猪川さんは聡明な努力家で思いやりがあって、その上、ご家族や友人、恩のある方を大切にされてるんだなってことだけです」
彼は意外そうな表情で、まばたきをした。
「驚いたな。そんなふうに言ってもらえるなんて思ってなかったよ」
「猪川さんの行動が、良いご縁を運んでるんですよね。私には難しいから、宮原神社の神様にお願いしてみようかな」
なぜ、こんなにも秋也が優しいのか、穏やかに笑うのか、それがわかった気がして、奈江の口から自然とそんな言葉がこぼれ落ちる。
「それって、一緒に祭り、行ってくれるってこと?」
「お祭りはあんまり得意ではないんですけど」
「祭りに得意とか不得意とかあるの?」
秋也は目を丸くしてそう言うと、おかしそうに笑った。
「考えすぎです。あれは疲れてただけで、猪川さんとは関係ないです」
知り合う前の話だ。あのとき、線路に落ちていたとしても、秋也のせいじゃない。
「たとえそうだとしても、何かあれば、俺は必ず自分を責める。もうこんな……、過去に縛られた人生からは抜け出したい」
それは、秋也の心の叫びのようだった。
だから、宮原神社の祭りに行きたいと言ったのだろうか。因縁とも言える縁を手放すために。
うつむく秋也の顔を、奈江はのぞき込む。間近で見つめ合う。こんなふうに男の人に接するのは初めてで緊張する。でも、秋也が見せた苦しみに向き合いたい気持ちが奈江の背中を押す。
「今のお話を聞いて思うのは、猪川さんは聡明な努力家で思いやりがあって、その上、ご家族や友人、恩のある方を大切にされてるんだなってことだけです」
彼は意外そうな表情で、まばたきをした。
「驚いたな。そんなふうに言ってもらえるなんて思ってなかったよ」
「猪川さんの行動が、良いご縁を運んでるんですよね。私には難しいから、宮原神社の神様にお願いしてみようかな」
なぜ、こんなにも秋也が優しいのか、穏やかに笑うのか、それがわかった気がして、奈江の口から自然とそんな言葉がこぼれ落ちる。
「それって、一緒に祭り、行ってくれるってこと?」
「お祭りはあんまり得意ではないんですけど」
「祭りに得意とか不得意とかあるの?」
秋也は目を丸くしてそう言うと、おかしそうに笑った。