繊細な早坂さんは楽しむことを知らない
「そうだな。それがいいよ。俺もそうするかな。欲しい縁は神頼みじゃなくても、多少は努力でどうにかなりそうだしね」

 秋也は腕にかけられた奈江の手を、ちらりと意味ありげに見る。

 ハッとして、手を引っ込める。

 どうかしてた。お付き合いしてもないのに引っ付いたりして。普段は絶対こんなことしないのに。何かの魔法にかけられたのか、魔がさしたのか……、やっぱり、宮原の神様が奈江たちを神社に呼び寄せようと、いたずらしたのかもしれないなんて思えてくる。

 でも、ずっと秋也に触れていたいと思った気持ちはうそではなくて……。それを神様のせいにするなんて、それもおかしい。

 揺れる思いを持て余してしまい、途方にくれていると、残念そうな顔をしている秋也と目が合う。気まずさを隠して、奈江はあわてて言う。

「人とのご縁が努力でどうにかなるなんて、宮原の神様が聞いたら、すねちゃいそうですね」
「そんなことないさ。参拝するだけでも、神様は見守ってくれるんだよ」

 秋也にはいつもハッとさせられる。

「伯母もそんなこと言ってました。縁結び祭りはご縁を授かりたい人が集まる祭りだから、出会う人といいご縁があるよって。神社へ出かけることに価値があるんだって教えてくれました」
「早坂さんの伯母さんは愛情深い考えをお持ちだよね」
「本当に、すごく思いやりのある人なんです」
「俺の叔母に似てるなぁって、初めてお会いしたときに思ったよ」
「叔母さんに?」
「雰囲気がね……って、うわさをすればだよ」

 うわさ……?
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