繊細な早坂さんは楽しむことを知らない
「仕事場だしね、興味のある範囲はきれいなんだよ。マンションの掃除はもっぱら、環生くんがやってくれてるよ。彼はきれい好きだから」

 ああ、そうか。彼には環生がいた。

「じゃあ、私なんて余計にいらないです」
「環生くんじゃ、早坂さんの代わりにはならないよ」

 おかしいなぁ、と秋也は愉快でたまらないとばかりに笑う。

「だって、環生さんの方がよっぽど家事ができそうですし」
「家事をするだけが結婚生活じゃないよ」
「わかってます。それだけじゃないんです」
「まだあるの? あるなら、全部教えてよ」
「……もうお気づきだと思うけど、人付き合いが苦手です」

 それが一番の不安要素だ。

 朝起きて仕事に行く。帰ってきたら、料理とは言えない料理をつくり、寝て起きて、また仕事へ行く。単調な生活に嫌気がさすこともあるけど、少なくとも苦手なものを回避しながらの生活はできている。結婚したら、回避できないものが出てくるだろう。文句ばかりの母を見て育ったから、いくら秋也が否定しようとも、こればかりは素直になれない。

「人間関係ってさ、四季と同じなんだってさ」

 ぽつりと、秋也がつぶやくように言う。

「四季?」
「暖かい季節もあれば、寒い季節もある。人間関係だって、うまくいくときもあれば、いかないときもある。夏から冬へと季節が巡るように、うまくいってたのにうまくいかなくなるときもあるよね」
< 150 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop