繊細な早坂さんは楽しむことを知らない
「まあ、吉沢らんぷはそういった作品ばかり扱ってるから珍しくはないんだけどね」

 店内にいくつも並ぶ、大小さまざまなビンテージランプを改めて眺める。博物館さながらに鎮座するガラスシェードのランプの数々が、芸術品と呼ぶにふさわしい美しさと荘厳さを備えているように見えてくるから不思議だ。

「全部、売りものなんですよね? あっ、でも、今は修理だけでしたっけ?」

 出窓にある張り紙の方へ目を向けると、青年は肩をすくめる。

「どうしても欲しいっていうお客さんには販売してるんだけどね、今は買い付けしてないから、店内にあるだけで終わりだし、売る気がないっていうかな」
「もう買い付けはしないんですか?」
「店長の吉沢さんがいないからね。店長が亡くなってからは、俺が店を引き継いで、今は修理だけ請け負ってるんだよ」

 そうなのか。遥希の父親は亡くなったのだ。

「あなたは買い付けやらないんですか?」

 奈江が疑問を投げかけると、青年はうっすら口もとに笑みを浮かべ、くしゃりと髪をつかむ。なんだか悪いことを聞いてしまったみたいだ。

「あっ、すみません。差し出がましいこと聞いたりして……」
「いや、全然。俺には向いてないからさ、買い付けはしないって決めてるんだ。吉沢さんの真贋を見分ける目があってこそだよ」

 気にしてないと言いつつ、彼はさみしそうな表情を見せるが、すぐに気を取り直したように、職人のまなざしでシェードの中をのぞき込む。

「壊れたのは、いつ?」
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