繊細な早坂さんは楽しむことを知らない
真紀子が口をへの字に曲げると、康代がぴしゃりと言う。
「あの子に罪はないだろう」
「怒らないでよ。お姉さんはかまわないかもしれないけど、私は気になるの。奈江と彼は年も近いでしょう? 知り合いになったら心配よ」
「そんな言い方はやめなさい」
「だって、ねぇ……」
肩をすくめる真紀子がこちらを見るが、奈江は何も言えずに黙っていた。しかし、胸は激しく波を打っていた。
母は秋也の何かを知っていて、奈江と知り合いになるのを危惧している。そして、伯母もまた、母の懸念の理由を知っている。秋也とは初対面のようなふりをしていたけれど、きっと以前から彼を知っていたのだ……。
「猪川さんちのお孫さんは、誰よりも家族を大切にしてる優しい男の子だよ」
康代がさとすと、気まずそうにした真紀子が口を開く。
「まだ大野にいるの?」
「あの火事のあと、お孫さんは親戚の方に引き取られて、大野に来たんだよ」
「そうだった? もともと、大野の子じゃなかったんだっけ」
康代はうなずいて、名刺をポケットから取り出すと、秋也の名前をなぞるように指を滑らせる。
「代表取締役だなんて立派じゃないか。はやく一人前になりたいって、働きながら大学へ通って、電気の難しい資格を取ったって聞いてる。奈江ちゃんとお友だちでも、何も心配いらない子だよ」
「あの子に罪はないだろう」
「怒らないでよ。お姉さんはかまわないかもしれないけど、私は気になるの。奈江と彼は年も近いでしょう? 知り合いになったら心配よ」
「そんな言い方はやめなさい」
「だって、ねぇ……」
肩をすくめる真紀子がこちらを見るが、奈江は何も言えずに黙っていた。しかし、胸は激しく波を打っていた。
母は秋也の何かを知っていて、奈江と知り合いになるのを危惧している。そして、伯母もまた、母の懸念の理由を知っている。秋也とは初対面のようなふりをしていたけれど、きっと以前から彼を知っていたのだ……。
「猪川さんちのお孫さんは、誰よりも家族を大切にしてる優しい男の子だよ」
康代がさとすと、気まずそうにした真紀子が口を開く。
「まだ大野にいるの?」
「あの火事のあと、お孫さんは親戚の方に引き取られて、大野に来たんだよ」
「そうだった? もともと、大野の子じゃなかったんだっけ」
康代はうなずいて、名刺をポケットから取り出すと、秋也の名前をなぞるように指を滑らせる。
「代表取締役だなんて立派じゃないか。はやく一人前になりたいって、働きながら大学へ通って、電気の難しい資格を取ったって聞いてる。奈江ちゃんとお友だちでも、何も心配いらない子だよ」