繊細な早坂さんは楽しむことを知らない
「全焼だったよ。あの火事で、お祖母さんと息子さんご夫婦が亡くなったんだ。唯一、助かったのが、秋也くんって名前の男の子でね」
奈江はたまらず立ち上がり、リビングを飛び出す。
「奈江ちゃんっ!」
呼び止められて、奈江はぼう然と康代を振り返る。
「おばさん……、私、猪川さんと話さなきゃ」
「話してくれるのを待ってもいいんだよ」
優しく言ってくれる康代に、奈江は首を振る。
「それって、私が頼りになるまで話してくれないってことだよね。そうなるまで、猪川さんはずっとそれを抱えていくんだよね。それは苦しいと思う」
「行くの?」
「行く。ごめんね」
秋也に深く関わるのを、内心は反対してるんじゃないか。康代だって、真紀子と同じだ。心配する素振りで反対してる。だけど、その心配を取り除けば、反対する気持ちもなくなるって信じたい。
「謝る必要なんてないじゃない。奈江ちゃんがそうしたいって思う気持ちを、おばさんは反対なんかしないから。でもね」
「でも?」
「話が済んだら、うちに連れていらっしゃいよ。猪川さんがおいしそうに大福食べる姿、おばさんも見たいから」
「おばさん……」
奈江は、うんと力強くうなずくと、優しい眼差しをする康代に背を向けて走り出した。
奈江はたまらず立ち上がり、リビングを飛び出す。
「奈江ちゃんっ!」
呼び止められて、奈江はぼう然と康代を振り返る。
「おばさん……、私、猪川さんと話さなきゃ」
「話してくれるのを待ってもいいんだよ」
優しく言ってくれる康代に、奈江は首を振る。
「それって、私が頼りになるまで話してくれないってことだよね。そうなるまで、猪川さんはずっとそれを抱えていくんだよね。それは苦しいと思う」
「行くの?」
「行く。ごめんね」
秋也に深く関わるのを、内心は反対してるんじゃないか。康代だって、真紀子と同じだ。心配する素振りで反対してる。だけど、その心配を取り除けば、反対する気持ちもなくなるって信じたい。
「謝る必要なんてないじゃない。奈江ちゃんがそうしたいって思う気持ちを、おばさんは反対なんかしないから。でもね」
「でも?」
「話が済んだら、うちに連れていらっしゃいよ。猪川さんがおいしそうに大福食べる姿、おばさんも見たいから」
「おばさん……」
奈江は、うんと力強くうなずくと、優しい眼差しをする康代に背を向けて走り出した。