繊細な早坂さんは楽しむことを知らない
奈江、と名前を呼ばれるのはまだ慣れない。だけど確実に、以前よりも今の方が、秋也の心の近くにいると勇気づけられる。
「伯母さんが大福一緒に食べようって」
「大福? それで来たのか?」
おかしそうに笑いながら、キーホルダーから店の鍵を選び取り、秋也は裏口のドアを開ける。
「秋也さんも一緒に食べないかって。時間はある?」
「今からちょうど、休憩時間。すぐに行く? それなら、着替えてくるから、ちょっと待ってて」
「その前に、話があるの」
そう言って、中へ入っていこうとする彼の背中を引き止める。
「大事な話?」
ふしぎそうに振り返る秋也も、奈江が思い詰めた顔をしてることに気づいて、真顔になる。
「今すぐ……がいいよな。中で話そうか」
秋也はすぐさま、奈江の背中に腕を回し、裏口からつながるキッチンへと入る。
奈江をソファーに座らせ、冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターをグラスに注ぐ。そして、グラスをテーブルの上に置き、彼もまた奈江の隣に腰を下ろす。
「何かあった?」
「彼岸橋の近くにね、猪川さんっていうお宅があったって聞いたの。今は空き地になってる、あの交差点の角のところ」
ああ……、と秋也は声にならない声を漏らし、グラスをつかむと、一気に飲み干す。
そうして、うつむく彼の手に、奈江はそっと手を重ねる。拒絶されたらどうしよう。不安だったけれど、彼はしっかりと握り返してくれる。
「伯母さんが大福一緒に食べようって」
「大福? それで来たのか?」
おかしそうに笑いながら、キーホルダーから店の鍵を選び取り、秋也は裏口のドアを開ける。
「秋也さんも一緒に食べないかって。時間はある?」
「今からちょうど、休憩時間。すぐに行く? それなら、着替えてくるから、ちょっと待ってて」
「その前に、話があるの」
そう言って、中へ入っていこうとする彼の背中を引き止める。
「大事な話?」
ふしぎそうに振り返る秋也も、奈江が思い詰めた顔をしてることに気づいて、真顔になる。
「今すぐ……がいいよな。中で話そうか」
秋也はすぐさま、奈江の背中に腕を回し、裏口からつながるキッチンへと入る。
奈江をソファーに座らせ、冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターをグラスに注ぐ。そして、グラスをテーブルの上に置き、彼もまた奈江の隣に腰を下ろす。
「何かあった?」
「彼岸橋の近くにね、猪川さんっていうお宅があったって聞いたの。今は空き地になってる、あの交差点の角のところ」
ああ……、と秋也は声にならない声を漏らし、グラスをつかむと、一気に飲み干す。
そうして、うつむく彼の手に、奈江はそっと手を重ねる。拒絶されたらどうしよう。不安だったけれど、彼はしっかりと握り返してくれる。