繊細な早坂さんは楽しむことを知らない
 あいつ……?

 誰だろう。尋ねていいものかと考えあぐねていると、うなだれる秋也が傷ましげに声を絞りだす。

「俺に関わるやつは、みんな死ぬんだ。両親も遥希も……あいつだって」

 だから、秋也は自分を悪魔だと思っているのか。みんなだなんて、そんなはずはないのに。不幸が続くことはあったのかもしれないけれど、それは彼に関わったからじゃない。

 ひざの上で握られる秋也のこぶしを見つめる。手を重ねて、大丈夫だって、そう言ってあげたいと思ったけれど、彼の何を知ってるわけでもないのに、大丈夫だなんて言葉を軽々しくかける勇気もなかった。

 ただ静かに見守っていると、秋也がこちらへ笑顔を向けてくる。

「早坂さんは、生身の人間が苦手?」
「突然、なんですか?」

 きょとんとしてしまう。

「EARS.使ってるって言うし、そんな感じがするから」
「……そうですね。どっちかというと苦手かもしれないです」

 正直に答えると、秋也が横髪にそっと触れてくる。そうしてないと落ち着かないのだろう。そんなふうに思って、奈江はどうということもないと受け入れる。

「繊細だよね、早坂さんって」

 奈江がどう答えたらいいかわからずに黙っていると、さらに聞いてくる。

「何かあるの?」
「……性格だと思います」

 そう答えると、彼はうっすらと笑った。

 こんな性格になった理由を知りたかったのだろう。だけれど、そんなことはうまく答えられない。
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