望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
(伯父さまが言う通り、こんな私が史輝さんの結婚相手に選ばれたなんて信じられない)
いくら笛吹家の血縁とはいえ、美紅には欠点が多過ぎる。
(もしかしたら何かの手違いで連絡が来たんじゃないのかな?)
史輝自らやって来たのは、その旨を伝えに来たのではないだろうか。
本家出身の令華に対しては、次期総帥だとしても適当な代理人を送るような、礼を欠く態度をとるわけにはいかないのかもしれない。
(きっと、そうだよね。私は花嫁候補に入っていなかったのだし、突然選ばれるなんておかしいもの)
客間の前に着く頃には、要件は丁寧なお断りだろうと思うようになっていた。
それでも扉を開けて中に入る瞬間、苦しいほどの緊張を覚えた。
初恋の人と、十年以上経ってからの再会なのだ。
ドクンドクンと心臓が脈打っている。
客間の中央には大きな紫壇の長机。その先の窓辺に、若く美しい男性が佇んでいた。
(史輝さん?)
子供の頃の面影は見つけられない。それ程十年という年月は長かったということだ。
とはいえ、彼が京極史輝だということは、疑いようがなかった。
すらりとした長身を上質のスーツに包み、どこか憂いを感じるその姿は、ため息が出るほど美しい。まるで現実から切り取られた絵のようだ。