望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
特に印象的なのは、少し目じりが上がった涼し気な目だ。目が合った瞬間、何もかもを見透かされているような気持ちになった。

声をかけることに躊躇いを感じる厳かな雰囲気。

彼はそこにいるだけで存在感を放っている人で、使用人として働くことしか出来ない自分とは別世界の人だ。

どう考えても美紅が隣に並べる相手ではない。

彼だって一目でそうと分かっただろう。涼しげな目に一瞬失望が浮かんだことに気付いてしまった。

きっとすぐに断られる。

それでも美紅は、悲しさや情けなさに沈む一方で、喜びも感じていた。

(元気そうでよかった……)

今では口を利くことすら憚られる程に立場の違いがある史輝と美紅だが、彼を大切に想う気持ちは変わっていない。

幼かった美紅を、妹のように可愛がってくれたことを感謝している。

母を亡くし心細いときに励ましてくれた優しさを、決して忘れない。

史輝の存在は、長い間、美紅の心の支えだった。

彼と最後に言葉を交わしたのは、美紅が中学生のときだ。

京極一族が通う幼稚舎から大学までの名門私立校の裏庭で、偶然すれ違ったのだ。
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