望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
旅行バッグに入っているのは、着替えが三セットと、下着。それからいつも使っている基礎化粧品だ。
他は大切にしている写真集が数冊と、裁縫セット。それから昨日、倉庫の中で見つけたテニスラケット。貴重品は通帳が一冊と、身分証だけ。

それが美紅が持っている全財産だった。

ドレッサーに化粧品を並べ、箪笥に下着と服を仕舞う。

棚に本を並べる。どこも空きスペースの方が多く、見た目があまりよくないけれど、仕方がない。

テニスラケットは悩んで、箪笥の引き出しの一番下に仕舞った。

一段落すると美紅はベッドに腰を下ろした。少し座っただけなのに、スプリングのよさを感じる。相当品質がよいものなのだろう。

広すぎる部屋に、上質な家具。史輝の妻ならば当然の待遇なのかもしれないけれど、美紅には戸惑いの方が大きくて落ち着かない。

小さく溜息を吐いたとき、床に置いたままにしていた旅行鞄が目についた。

昨日、荷造りをしているときに、伯父に押し付けられたものだ。

紙袋に服を詰め込んでいる美紅を見て、あまりにみすぼらしすぎると思ったのかもしれない。

落ち着いたら、送り返さなくては。
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