望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「旦那様と美紅さんをお呼びです。客間でお待ち頂いておりますが、かなりお急ぎのご様子で……」

「すぐに行く! 美紅も来い!」

「は、はい」

伯父は慌てて執務椅子から立ち上がりこちらにやって来たが、美紅に目を留めた瞬間、嫌そうに顔をしかめた。

「なんだその恰好は!」

「あ……すみません、さっきまで倉庫の片付けをしていたので」

今の美紅は紺の長袖Tシャツとベージュの作業用パンツに、使い古したエプロン姿。そのエプロンはよく見ると、墨を零したようにところどころ黒く汚れている。

伯父に突然呼び出されたため、着替えをする時間がなく、倉庫から直接やって来たからだが、こんな姿で史輝の前に出るのだと思うと悲しくなる。

いつもは美紅の服装など気にも留めない伯父も、さすがにまずいと感じたのか、焦りをみせる。

「あの、着替えて来てもいいでしょうか?」

お洒落な服など持っていないが、少しでもましな恰好をしたい。そんな願いは令華の冷たい言葉で跳ね付けられる。

「史輝は急ぎだと言っているのだから、着替える時間なんてないわ。そのまま行きなさい」

「だがさすがに……」

「この子は着飾っても無駄だし、ありのままを見せた方が史輝の為にもなるわ。今ならまだ結婚相手を変更することもできるでしょうから」

伯父が異議を唱えたが、令華が聞き入れる様子はない。
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