夏に咲く君に、きっと恋する【完】
一層照りつける日差しが強くなってきた夏の中盤、今日はいつもの心地よい風があっても蒸された教室のままだ。もちろん、彼も居る。
「………あのさ、俺の授業って、どう思う」
唐突に、そう口を開く。何故そんな事を私が尋ねられたのかと思った。
「なんていうか、悪くはないですけど。当たり障りのないというか、正直に言うと、少し退屈な所もあります」
「…だよな。実はな、俺自身もそう思ってる。模範解答、模範解答、教師の誰もが口を揃えてそう言う。俺はそんな教育のあり方が正直気に食わない、けどこの時代に俺みたいな下っ端が抵抗する手段もない」
どこか苦しい表情で、唇を噛む横顔が目に入る。端正な顔立ちには、とても似つかわしくない。
「特に現代文なんて、とうの昔を生きてようが、今を生きてようが、言葉一つで誰かの心を動かす力がある。その言葉に対しての感情をどう捉えるかなんて人それぞれで、なんて返すかも自分次第なんだ。表現の仕方も十人十色。日和も他の皆も、高校生という立場には数え切れない未来の選択肢が広がっている。今こそ自分の考え方を広げて感性を養うべきなんだ。……日和は面白い視点を持ってるから、俺は気になってしまう」
そう言いながら、最後には白い歯を見せたがいつもの屈託のない笑顔とは違い、哀愁が漂っている。
ーー気になってしまう。
それが私に対して面白い人間である、との提示だと分かっていながらも、別の意味で捉えてしまう自分もいたのだった。実は私が思う以上に、真面目で、熱心で、誰かの心を動かす事ができる素晴らしい人なのではないかと、思ったりもした。私は前より、確実に彼の事が気になっていた。
「………あのさ、俺の授業って、どう思う」
唐突に、そう口を開く。何故そんな事を私が尋ねられたのかと思った。
「なんていうか、悪くはないですけど。当たり障りのないというか、正直に言うと、少し退屈な所もあります」
「…だよな。実はな、俺自身もそう思ってる。模範解答、模範解答、教師の誰もが口を揃えてそう言う。俺はそんな教育のあり方が正直気に食わない、けどこの時代に俺みたいな下っ端が抵抗する手段もない」
どこか苦しい表情で、唇を噛む横顔が目に入る。端正な顔立ちには、とても似つかわしくない。
「特に現代文なんて、とうの昔を生きてようが、今を生きてようが、言葉一つで誰かの心を動かす力がある。その言葉に対しての感情をどう捉えるかなんて人それぞれで、なんて返すかも自分次第なんだ。表現の仕方も十人十色。日和も他の皆も、高校生という立場には数え切れない未来の選択肢が広がっている。今こそ自分の考え方を広げて感性を養うべきなんだ。……日和は面白い視点を持ってるから、俺は気になってしまう」
そう言いながら、最後には白い歯を見せたがいつもの屈託のない笑顔とは違い、哀愁が漂っている。
ーー気になってしまう。
それが私に対して面白い人間である、との提示だと分かっていながらも、別の意味で捉えてしまう自分もいたのだった。実は私が思う以上に、真面目で、熱心で、誰かの心を動かす事ができる素晴らしい人なのではないかと、思ったりもした。私は前より、確実に彼の事が気になっていた。