夏に咲く君に、きっと恋する【完】
 それからというもの、彼と話す事で生徒の勝手な憶測が加速したり、彼にまで被害が及んでしまうのでは無いか、身を引いたほうが今後のお互いの為ではないか、と思っていたが自分の気持ちに嘘をつくことはできなかった。

 素直に言葉で自分の気持ちが伝えられないままだった。しかし、どうやらその感情が私は顔に出ていたらしい。

 「日和。元気ないな、大丈夫か。暑さで脳がやられでもしたのか」

 と彼が私を笑い飛ばそうとするのが伝わり、私も小さく笑うが本心では彼は私を心配してくれていることが、その口調の焦りから感じ取れた。いつもはあんなに熱心なくせに、口下手な一面もあるのだと思った。

 「大丈夫です。でも先生は人気だから、私みたいな人にこんなに話しかけてくれてわざわざ会いに来てくれるのが変な気持ちで」

 「あのな、ここだけの話だがな。日和と話しているとなんか自分よりも大人びているから落ち着くというか。まあなんだ、俺は日和という人間をもっと知りたい、だからこうして話しかけに来ているけど迷惑だったよな、ごめん」

 「何も謝ることないです、というか気を遣わせてしまってすみません」

 会いに来てくれるのが嬉しいと、私は素直になれなかった。彼はこんなにも素直なのに。

 「良いんだ。あのさ、今時間あったりするか」

 「はい、何かあったんですか」

 何を言われるのだろうと胸がどくんどくんと悲鳴を上げていたが、私はもう何を言われる覚悟もできていた。
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