夏に咲く君に、きっと恋する【完】
 「ごめん。重たい空気にさせてしまったな」

 確かに空気はどんよりと、心持ち、雨が降りじめじめしている外と大差がないように思えたが、私の心の何かは瞬間的に動いていた。

 「せ、蒼先生、蒼、」

 訳がわからないまま呼び捨てしてしまい、彼は目を見開き驚いたが、抑えきれない程に私の感情は高ぶっていた。

 「私では代わりにならないんですか」

 自分でも思いもよらぬ言葉が出てくる。

 「私が紡ぐ言葉を、私の生き方を、良いと思ってくれるなら私は、まだまだ足りない存在かもしれないけれど、決して先生のお母さんに取って代われる存在にはなれないし、なろうなんて思ってない。

 でも、先生の側で人生に彩りを与えるお手伝いをしたい。私を頼ってくれませんか、蒼先生、ずるいよ、いつも頼られてばかりで」

 次から次へと出てくる言葉に、何故だか、涙も止まらない。必死に自分を落ち着かせながら、丁寧に、話を続けた。
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