本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
 連絡を受けたホテルスタッフがすぐにやってきた。案内された部屋に驚く。
 前の部屋とは段違いに広い上、リビングとベッドルームが分かれていた。まさか彼が同室だと勘違いしているのではないかと焦って訊ねると、そんなことはないとあっさり否定された。

 窓の向こうには『ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ』の太陽電池を備えたスーパーツリーや『フラワードーム』などの特徴的な建物がよく見え、その向こうにはマリーナ湾が広がっている。

 豪華すぎるサービスに二の句が継げないでいるうちに、スタッフはクラブフロア専用のラウンジやレストランが無料で使用できることなどを説明して去って行った。

「よかったな。クラブフロアの客なら質の悪いやつもそんなにいないだろう」
「そ……そうね」

 お兄ちゃんの言葉にやっと我に返る。見知らぬ男達から強制わいせつを受けた私に、少しでも恐怖心や嫌な記憶を持ち続けなくて済むように配慮してくれたのだと気がついた。さすが五つ星ホテル。ホスピタリティのレベルがけた違いだ。

「それにしてもずいぶん早く済んでびっくりしたわ」

 思わずそう口にすると、お兄ちゃんはなにかを悟ったように「ああ」と口にする。
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