本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
「この国は日本と違って強制わいせつ罪でも裁判所の令状なしで逮捕ができるんだ。今回は証拠動画と被害者本人の証言があれば十分だったんだろうな」
「そうなんだ……」
「ああ。でももしまた呼び出しがあったら、ホテルでも警察でも付き添うから安心していい」
「ありがとう、圭吾お兄ちゃん」

 顔を見てお礼を言うと、もう一度頭をぽんぽんとはたかれた。
 子どもの頃から変わらない温かさに安堵する。それと同時に、前向きな気持ちに慣れているのは、他でもないお兄ちゃんのおかげだと気がついた。

「圭吾お兄ちゃん。いえ、朝比奈弁護士」

 あらたまった言い方をした私に、彼が目を丸くする。

「今回のこと、本当にありがとうございました。証拠動画と事情聴取への付き添い等にかかる依頼料を教えていただけませんか? きちんとお支払いします」

 弁護士依頼にいったいどれくらいの費用がかかるのは知らない。けれど九年間がんばって働いて貯めてきたお金がある。出せない金額ではないはずだ。
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