本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
***

「わ、すごい!」

 会場に足を踏み入れた途端、人々の熱気と独特の雰囲気に声が出した。

 やってきたのは『マリーナベイ・サンズカジノ』。依頼料を払うか払わないかと押し問答の末彼が持ちかけたのは、なんと〝賭け〟だった。
 このホテルに併設されたショッピングモールのカジノで勝負をして、私が勝ったらお金を受け取ってくれるという。

 広大な会場にところ狭しと並べられたテーブルには『ディーラー』と呼ばれるスタッフがついていて、客の相手をしている。

 本格的なカジノに圧倒されていると、お兄ちゃんは「こっち」と言って指さした方へ進んでいく。とりあえずついて行くと、彼は階段を上り始めた。

「ゲームしないの?」
「するよ。二階が禁煙エリアになっているからそっちへ行こうと思って」
「そうなんだ」

 一階はかなり広く、大部分が吹き抜けになっていて、吹き抜けを囲む形で二階から四階までがある。きょろきょろと辺りを見回していると、三、四階は賭け金が高額に設定されたVIPエリアとなっていることをお兄ちゃんが教えてくれた。初心者や旅の思い出作りなら、一階二階で十分楽しめるとのことだ。

 説明を聞きながら、隣をこっそり盗み見る。
 白いVネックTシャツに、ネイビーのジャケットとテーパードパンツを身に着けている。シンプルな装いがスタイルの良さを引き立てていて、大人の余裕すら感じられる。

 昔と同じ爽やかさの上に、成熟した男性の色香まで加えられていて、否が応でも鼓動が速まった。
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