本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
 これだ。お兄ちゃんはいつもこうだった。

 私が彼に釣り合う女性になろうと必死になるたび、絶妙なタイミングで〝妹だ〟と告げて来る。裏はなさそうな表情なのに、何度も同じようなことを言われれば、牽制されているのかもと勘ぐってしまう。

 十代の頃の六歳差はとてつもなく大きい。
 彼の視界にひとりの女の子として映りたいのに、その隔たりにずっと阻まれていた。

 早く大きくなりたい。お兄ちゃんに追いつきたい。焦れるばかりで関係は全然変わらない。
 そうしている間にも、モテる彼は誰かと付き合ったり別れたりする。それを目の当たりにしているうちに、私は淡い恋心を胸の奥に封印することにした。

 〝妹ならずっと仲良くしてもらえるよね?〟

 どうせ初恋なんて叶わないのだ。こんなに素敵な幼なじみのお兄ちゃんがいるだけで十分だ。
 やっとそう悟った頃、彼は実家を出て会う機会もなくなった。

「私カジノには行ったことないし、ルールなんてさっぱり知らないわよ?」
「心配しなくても大丈夫。せっかく来たんだ、楽しむことだけ考えよう」

 お兄ちゃんは私の手を取り、二階フロアを進んでいく。並んでいるスロットマシンのうち一台に私を座らせた。

「え! いきなり私?」
「やったことなくてもこれならルールも知っているだろう?」

 さすがにスロットくらいは知っている。三つの目をそろえればいいのだ。
 うなずいたら、お兄ちゃんがマシンにお金を投入した。
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