本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
 失恋相手の結城櫂人(ゆうきかいと)は、仕事だけでなく人柄も容姿も驚くほど完璧だった。
 一緒に働き出してからあっという間に彼のことが好きになったが、アメリカにいるうちは告白しないことに決めていた。逃げ場のない海外勤務だ。気まずい空気になるのは避けたかったし、真摯に職務を遂行する彼の邪魔もしたくはなかった。

 そうしてひそかに恋心を温め続けて二年。幸いなことに彼と同時に日本に戻って来られた。それがこの四月のことだ。

「それで、告白したけどダメだった、ということか」

 お兄ちゃんの残念そうなセリフに頭を左右に振る。

「告白しようと思ったんだけど、その前に首席に特別な人がいることがわかったの」

 アメリカにいる間は、そんな相手を日本に残してきた感じはしなかったから驚いた。

 彼に恋人がいるとわかっても、すぐには諦められなかった。
 ここまで理想とぴったりの相手にはきっともう二度と巡り合えない。そう自分を奮い立たせたけれど、そんなこと意味がなかった。相手女性との間に、彼の子どもがいると聞かされたのだ。

 頭を金づちで殴られたような衝撃が走った。あんなに誠実で真面目そうな男性が、まさか結婚前に恋人を妊娠させるなんて。しかもどう見ても彼女がひとりで子どもを育てていたようだった。

 彼のことを理想の人だと信じて疑わなかったのに、まさかその真逆だったのだ。
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