契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 一縷の望みで両親に先約があることを願ったが、それは虚しい期待と成り果てる。
 隣に座る彼にも聞こえるほどの声量で、母が『明日の昼頃いらっしゃい! お父さんと待っているわ!』と叫んだからだ。

「よ、予定があるなら無理しなくても……急な話だし……」
「何言っているのよ。どんな予定があったって、こっちを優先するに決まっているでしょう。ああ、楽しみだわ。これでご近所さんにも恥ずかしくない。もう、お相手が普通の社会人であれば贅沢は言わないから! 多少不細工でも収入が低くても、あんたをもらってくれるんだもの!」

 ひどい言われようである。
 浮かれ散らした母の言葉はそのまま東雲の耳にも入っているのだが、そんなことは想像もしていないに決まっていた。

「希実の好きなもの、作って待っているからね!」

 だが愛情があるのも事実。
 本気で心待ちにしてくれているのが、弾んだ声から伝わってきた。

 ――悪く言えばデリカシーがないけど、よく言えばあけっぴろげで裏表がない……だから、嫌いにはなれないんだよね。

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