契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 父母の価値観に思うところは多々ある。それでも――かけがえのない両親だ。
 急遽決まった帰郷に複雑な思いを抱きつつ、希実は通話を切った。
 一瞬の静寂が車内に落ちる。
 破ったのは、東雲だった。

「……賑やかなお母様ですね」
「騒がしくてすみません……私が男性を家に連れて行くのが初めてなので、興奮しているのだと思います」
「希実さんは誠実に生きてこられたんですね。それにとても愛されているのだなと感じました。これは明日、ご両親にガッカリされないよう、僕が頑張らなくてはなりませんね」
「し、東雲さんがうちの親に失望されるわけがありません。ぁ、それより母がとても失礼なことを……!」

 不細工だとか収入が低いだとか、憶測からの言葉でもどれも無礼千万だった。
 遅ればせながら、申し訳なさが募る。
 慌てた希実が挽回策を練っていると、車が滑らかに停車した。母との電話で手一杯になっている間に、希実が住むマンションへ到着していたらしい。

「ちゅ、駐車場はその角を曲がってすぐにコインパーキングがあります」

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