契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 残念ながら来客者用の駐車スペースがあるマンションではないので、希実は一番近くのパーキングを案内した。
 当然、東雲が部屋に寄るのだと思っていたからだ。

「明日は希実さんのご両親に会うため遠出しますし、今夜の荷造りはやめておきましょう。ゆっくり休んでください。渋滞を考慮して、迎えは九時で如何ですか?」
「え」

 確かに予定が変わったのなら、今夜慌てて荷造りする必要はないのかもしれない。
 だがそうなると、東雲はただ希実を車で送ってくれただけになってしまった。
 仕事終わりで疲れているところを、しかも高速まで使って。流石に申し訳なさが膨らみ、希実は狼狽えた。

「その、お茶を飲んでいかれますか? あ、でもそれだと東雲さんの帰宅が遅くなってしまいますよね」

 緊張感に満ちたドライブではあったが、満員電車に揺られて帰るよりも希実の身体は随分楽だった。
 その感謝は伝えなくてはなるまい。
 せめて一息吐いてから帰ってもらうべきか、手土産でも渡すべきかを咄嗟に考えた。

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