契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 ふ、と唇で弧を描いた彼は、乏しい光の下で尋常ではなく妖艶だった。

「貴女が他者を思い遣る性格で、とても親切な点は長所です。思慮深いところも素晴らしい。でも、ご自分が魅力的な方であることを、自覚していただきたいですね」
「み、魅力……っ? 私なんか……」
「なんかは禁止だと言いましたよね? これからはペナルティ制にしましょうか」
「え」

 身動きできなかった。
 瞬きすら、完全に忘れた。
 軽く顔を傾けた東雲の顔面がさらに近づく。
 反射的に眼を閉じたのは、希実に明確な意図があったのではない。
 ただ驚いたのと、ほんの僅か予感があったのも否めなかった。

「……っ、ふ」

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