契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 だが希実は大事なことを一つ忘れていた。
 足元には、探し出した数冊のファイルが積まれていたことを。
 倉庫の奥、暗がりを目指していた希実は、それらへ払うべき注意がつい疎かになった。

 ――ぁ……っ

 バサバサッとファイルが崩れる音がする。
 男女二人の眼差しが、一斉にこちらへ向けられた。

 ――万事休す……!

 咄嗟に全身を強張らせたのは言うまでもない。
 自分の口を押え、悲鳴を漏らさなかったのがせめてもの抵抗。いや、這い蹲ったまま動けなくなったのが正直なところだった。

「誰かそこにいるのっ?」

 女の鋭い声が飛んでくる。
 刃物の如き鋭利さに、生きた心地もしない。
 見つかるのは時間の問題だと絶望感に苛まれた希実は、強く目を閉じた。

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