契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 彼が心底希実を欲しているのが感じられ、真摯な渇望に即答はできなかった。
 簡単に首を横に振ることも、頷くことも難しい。
 こんなことを言われたのは初めてで、希実にはどう答えればいいのか全く分からなかったせいだ。

「わ、私……」
「僕が帰るまでによく考えて決めてほしい。拒否しても僕は絶対に怒らない。それは単純にこちらの努力不足だ。僕がもっと頑張って希実の気持ちを手に入れなくちゃいけないだけだ」

 熟れた頬に口づけが落とされ、よろめいた希実は椅子に座らせられた。
 混乱し、頭が働かない。
 額にもキスを贈られ、視線がさまよう。
 東雲は「先に戻る。君はもう少し落ち着いてから戻ればいい」と言い置き、先に会議室を出ていった。
 部屋の中央に配されたテーブルの上には、ポツリと希実の眼鏡が置かれている。
 それを見つめながら、希実はどんどん赤らむ頬を両手で覆った。


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