契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~


 食堂での一件のおかげか、以降希実があれ以上絡まれることはなかった。
 逆に腫れ物に触る扱いをされ、妙に静かになったくらいだ。
 叶うなら、このまま騒ぎが沈静化すればいい。しかし一番の障壁とも言える花蓮がいなかったことが、希実には懸念材料として残った。
 だがそれすら『後回し』にせざるを得ない問題が新たに勃発している。
 言わずもがな、東雲に告げられた『部屋に行ってもいい』か否かへの回答だった。

 ――どうしよう。どうすればいい?

 昼間は仕事に没頭することで、夜について考えないようにしていた。
 しかし帰宅してしまえば、難題に直面するしかない。
 それでも何だかんだ身支度を整えてしまったことが、希実の無意識の返事だと言えた。
 風呂で入念に身体を磨き、とっておきの下着と新品の部屋着を下ろす。それが期待でなくて何なのか。
 自分でそのことに気が付いて、しばし呆然とした。

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