契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 ――そうか……私、『嫌』じゃないんだ……

 本気で無理だと思っているなら、以前住んでいた自分の部屋へ避難してもよかった。あそこはまだ解約していない。
 賃貸契約期間が残っているし、何よりも全部の荷物を片付け終わっていないからだ。
 それなのに希実は当たり前のように、東雲のマンションへ帰った。
 考えが纏まらない中、彼を待っている。
 頭でゴチャゴチャ考えるより先に、心は決まっていたのかもしれない。

 ――私たちの結婚は偽りで、東雲さんと関わるようになって日が浅いとか……拒否する理由はいくらでもある。でも、私は『駄目じゃない』理由も探そうとしていた……

 だからこそ、時計を何度も眺め彼の帰宅を待っている。
 腑に落ちてしまえば、問題はとてもシンプルだった。
 いつもより念入りにトリートメントした髪を梳き、緊張感を嘆息でごまかす。
 その刹那、鍵を開ける音が聞こえ、希実は思わずリビングのソファーから立ち上がった。

 ――あ……部屋で待っていた方がよかった……? でもそれも何だか違う気が……

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