契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 甘くて過激な口説き文句に、心臓が大きく脈打った。
 もはや口から飛び出してもおかしくないほど、拍動が激しくなっている。
 仰向けに寝転がっている以外動いていなくても、全力疾走している気分だった。

「い、いつから私のことを……」
「まともに会話したのは地下倉庫で出会った日でも、僕はそれ以前から希実のことを認識していた。たぶん、入社式で既に気にかかっていたのかもしれないね。あの頃は自覚がなかったが、その後偶然社食でケーキを頬張っている君を見かけ、印象に残っているくらいだから」
「え、ぁ、あれを見ていたんですか……っ?」

 福利厚生が厚いのか、クリスマスには特別仕様のケーキが社員食堂に並ぶ。
 それを毎年希実は非常に楽しみにしていた。何せとても美味しいのだ。
 いつもニコニコで食べていたから、誰に見られていても不思議はない。
 けれどまさか、東雲に目撃されていたとは夢にも思わなかった。

「し、東雲さんが食堂にいらっしゃることがあったなんて……」
「社員の生の声は大事だからね。あそこで食事をとることは少ないが、度々観察はしていたよ」
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